「増資・株式発行と新株予約権の実務−法務・会計・税務・登記−

はしがき

 平成18年5月1日に施行された会社法に準拠する形で、増資および新株予約権を取り扱った、実務かを対象とした本である。

 昨年10月に出版した「資本・法定準備金減少と自己株取得等の実務」の姉妹本であって、前書と同形式をとり、法務、登記、会計および税務といった実務上に必要とされる様々な局面から、新しい増資と新株予約権の全体像と個々の手続を洗い出そうとした。

 今年2月から執筆を開始し、会社法省令、登記、会計および税務の個々の規律の各段階毎の制定を追うように内容を膨らませていった。その過程は我々の想定を超えた苦行の連続であり、膨大な量の官報や公表されたばかりの規則を前に頬づえをつき、内容の理解に大いに頭を悩ませることとなった。旧商法時代と大きな考えの隔たりのある部分もあり、頭の切り替えだけでなく、書き溜めた原稿をゼロから書き直さざるをえない箇所もいくつかあった。

 今回の改正は会社法にとどまらず、登記、会計、税務にまたがる一体改正である。すべての局面からの検討や理解がなければ、実務はいずれかの時点で陥穽にはまるおそれが強い。当初、実務を完璧にカバーしリードする本を目指したが、作業を進行し煮詰めていく過程で、その全体の大きさに呆然とし、それ以降はむしろ、今後の実務や考え方の踏み台またはたたき台となろうとした。当然のことではあるが、新規律に基づく実務も参考文献もなく、条文や規則が頼りの暗中模索の中での作業であったが、このような状況は我々についてだけではない。同じような状況にある実務家に対し、ほんの少しの手がかりや整理のヒントを提供できるならばそれで十分ではないだろうか、との考えに基づく。でなければ、本書はいつまでも出版されることはなかったと思う。

 本書が今後の実務やその道しるべとして、多少でも役立つならば幸いである。 

 仕事の終わった夜、そして貴重な休日を執筆に充てていただいた執筆者各氏に感謝したい。試行錯誤の果ての徒労も数多くあったと思う。また、それを陰で支えていただいた家族の方々、本書の企画から完成までご足労をお掛けした新日本法規出版の深谷哲仁氏、私どもの事務所で校正にあたってくれた今村眞由美、西本真理子に感謝の意を表したい。

 平成18年9月

 執筆者代表  都築 敏